ここ何年も、ひたすらアルバン・ベルクと武満徹の音楽を追いかけてきました。 現代音楽と茶碗のコラボレーションです。
伝統は自分のうちに宿っていると自負するものですが、正直に申しますと「これが茶碗か」と皆様が驚かれるようなものです。今年 76 歳、行き着くところまで行ってみなければならない年齢です。さすればさらに遠くの何かが見えてくると信じています。
また、今回、岩崎寛氏に出会いました。彼は写真家です。
彼の写真に惚れ込み、撮影していただきました。茶の湯、樂、伝統、そうした既成概念にとらわれずに自由に 思うままに撮影して欲しいとお願いし、茶碗を預けました。数ヶ月後、素晴らしい写真が届きました。強烈で モンスターの様な写真です。私の茶碗ももはやモンスター、彼の写真は見事に私のモンスター振りを射抜いています。葛西薫氏という素晴らしいデザイナーにも恵まれ、できあがった作品集もモンスター、まさに強烈な 迫力です。昔ある哲学者が「樂君、作家は鬼にならなきゃならんのだよ」といわれました。「鬼」、今ふと先生 のことを思いだしました。
これを一冊の本にして残したいと思いました。本はタイムカプセルです。時代を超え未来に伝える精神の軌跡です。50 年、100 年先の若者の目にとまり「これ素敵じゃない！私、この人の気持ちわかるわ！」と共感する人あらば、それで本望です。
ですから未来に向けて伝える為に、立派な美しい本にしていただきました。
この「たった2日の展覧会」、 ご来臨賜りますれば、何より幸甚に存知上げます。